亡き父がいまも伝えてくれるメッセージ

父の七回忌の法事のため、娘である私は九州まで新幹線で帰ってきました。

 

とても厳格な父だったので、気の強い私はよく喧嘩もしたものです。
それなのに、思い出されるのはいい思い出ばかり。
もう、七年も経ってるというのに、何かあるといまだにじんわりと涙がこみ上げてきます。
でもその涙は、父がいなくなった哀しみというより感謝の気持ちにいつしか変わりました。

父の書斎は母の意向で、生前のままの姿で残してあります。
私はその父のいない部屋でぼんやりと過ごすのが好きです。
本棚に入りきれない本が何列にも重ねられています。
倒れそうに傾いているのも昔のままです。

 

いつも、その本の中から一冊ずつもらって帰ることにしています。
どの本にしようかと、選ぶのも結構楽しいのです。

 

今回目に留まった本は水上勉さんの「土を喰う日々」という本です。
埃をかぶり、茶色に色褪せ、独特の臭いを放つその本をぱらぱらとめくります。
子どもの頃、京都の禅師で修行をしていた水上勉さんが、その時に教えられた精進料理を
12か月に分けて紹介してある本です。

 

私は早速帰りの新幹線の中でその本を読みました。

 

題名どおり、香ばしい土の匂いのする今では忘れられてしまったような料理の数々が
魅力たっぷりに本当に美味しそうに載っています。

 

料理は時代が変わっても、人々が興味を失うことはないでしょう。
ですが、本当の日本人の食の原点が消えかかってしまっていることを
伝えてくれるようなエッセーでした。

 

私は食の大事さを改めて強く感じました。
父は亡くなっても、この本を介して娘の私に伝えてくれたような気がして
心が洗われたような、背筋が伸びたような清々しい気持ちになりました。

 

我が家の食卓がちょっと変わりました。